テリパラチド療法

 テリパラチドの導入は脊椎の圧迫骨折既往の患者さんが21例(このうち大腿骨など他の骨折も併発3例),多発骨折1例,恥骨の脆弱性骨折1例です.
 本人あるいは家族が注射できる人は原則フォルテオで8例,それを忌避された方はテリボンを選択し15例,テリボンは通院できる一人を除いて往診で施行しています.ステロイド骨そしょう症の男性1人以外はすべて女性です.
 費用はかかりますが骨折して入院するよりはまし,週1回の外来通院はこの薬の適応となる方には無理な人が多いので予算と当方のエネルギーが続けば訪問でするのが理にかなっています.テリボンでは2例に注射当日のふらつき,倦怠感,1例に血圧低下がありましたが継続できています.フォルテオでは既往骨折部の人工骨付近の注射後の疼痛を1人訴えられました.
 また,テリボン投与12週,フォルテオ投与44週後の転倒による骨折をそれぞれ1例に認めました.
 P1NPを骨形成マーカーとして測定していますが,その絶対値は個人個人バラバラでやはり変化率をとらないと統計や論文にはならないと思います.以下その詳細を下に示します.

テリパラチド療法の実際(2016年5月現在)

  年齢・薬剤 既往骨折 治療期間・副作用 P1NP最高値
88歳 テリボン 胸椎 72週終了,倦怠感・ふらつき+ 61.1
90歳 テリボン 腰椎・橈骨・脛骨 異時性骨折 72週終了 84.6
91歳 テリボン
腰椎 72週終了 65.1
86歳 テリボン 腰椎 72週終了,倦怠感+ 68.6
83歳 テリボン 腰椎 71週 76.0
90歳 テリボン 腰椎・仙骨 異時性骨折 64週 87.2
100歳 テリボン 腰椎・橈骨 異時性骨折 63週  
87歳 テリボン 腰椎 62週 47.9
97歳 テリボン 腰椎 62週 185.4
10 87歳 テリボン 腰椎 60週 101.1
11 85歳 テリボン 腰椎 57週 46.9
12 91歳 テリボン 腰椎 52週 44.3
13 85歳 テリボン 腰椎 38週 31.5
14 93歳 テリボン 腰椎・大腿骨 12週で転倒による反対側大腿骨骨折  
15 87歳 テリボン 腰椎 44週で他院に転院  
16 75歳 フォルテオ 腰椎2回,大腿骨2回,上腕骨,鎖骨,異時性骨折 96週終了  
17 78歳 フォルテオ 胸椎・腰椎 56週 100.7
18 82歳 フォルテオ 胸椎・腰椎,ステロイド骨粗しょう症 48週 53.1
19 86歳 フォルテオ 腰椎 48週 72.8
20 81歳 フォルテオ 恥骨,大腿骨 44週後転倒による大腿骨骨折 141.1
21 76歳 フォルテオ 胸椎・腰椎 胃切除後骨粗しょう症 44週 136.3
22 75歳 フォルテオ 腰椎 28週,テリボン外来通院が困難でフォルテオへ変更 105.3
23 82歳男性フォルテオ 腰椎・大腿骨異時性骨折,ステロイド骨そしょう症 44週 214.9

テリパラチドの文献

1.
Lancet Volume 386, No. 9999, p1147–1155, 19 September 2015
Denosumab and teriparatide transitions in postmenopausal osteoporosis (the DATA-Switch study): extension of a randomised controlled trial
Dr Benjamin Z Leder, Joy N Tsai, MD,Alexander V Uihlein, MD, Paul M Wallace, BA,Hang Lee, PhD,Robert M Neer, MD,Sherri-Ann M Burnett-Bowie, MD
→PDF
閉経後の骨粗鬆症女性77人をランダムにテリパラチド1年投与後テノスマブ1年投与27人,デノスマブ1年後テリパラチド1年投与27人,両剤投与23人の3群に分けて2年後の脊椎,大腿骨頸部,橈骨の骨密度の変化を測定した.脊椎の骨密度は両剤投与で16%,テリパラチド→デノスマブで18.3%,デノスマブ→テリパラチドで14%増加した(各群間に有意差なし).大腿骨頸部の骨密度は両剤投与で9.1%,テリパラチド→デノスマブで8.3%増加したのに比べデノスマブ→テリパラチド群の4.9%増加にとどまり,他群との間にp<0.05で有意差を認めた.また,橈骨の骨密度はデノスマブ→テリパラチドとすると一過性に却って減少した.他の群は変化なかった.
以上よりテリパラチド→デノスマブの順で投与すると脊椎のみならず大腿骨の骨密度上昇を期待できる.両剤併用も効果が高いがコストも高い.

2.
N Engl J Med 357:2028-39, 2007
Teriparatide or Alendronate in Glucocoruticoid-Induced Osteoporosis
Kenneth G Saag,et al.
ステロイド骨粗鬆症におけるアレンドロネート(以下A群)とテリパラチド(以下T群)のランダム化比較試験.両群n=214で18か月間の投与デザインで開始.ステロイド使用の原疾患は関節リウマチが51.9%(A群)と45.8%(T群,以下も同順),SLE9.8%と13.1%,呼吸器障害が14.5%と13.6%など.脱落例 A群70例(うち13例は副作用原因),T群64例(内25例副作用原因),最終的にA群144例,T群150例が18か月間の治療と観察終了.
腰椎の骨密度はT群でA群より有意差をもって上昇(ベースラインより7.2%vs3.4%),Total hipでもT群でA群より有意差をもって上昇(3.8%vs2.4%).
脊椎の骨折はA群で13例,T群では1例のみ.脊椎以外の骨折はA群8例,T群12例.
他骨形成マーカーとしてP1NP,骨吸収マーカーとしてCTXを測定しているがそれぞれの薬剤効果がでている.

abstract